宝飾業界に於いてもネット取引に適した商材は多い。例えばダイアモンド、クオーツ、ガーネットの裸石、色石メレー、空枠、パーツ、ジュエリーケース、ディスプレイ用什器、工具・器具などが代表的なものであろう。これらをB2B(企業対企業。業界内取引を指す)で商うメリットは大きい。

 まず挙げることのメリットは、取引情報の電子化だ。ほとんどの企業は、ファックシミリや電話で受け付けた受注データを何らかのソフトに入力することで管理していると思う。これを、データ形式を工夫した上でインターネットで受注すれば、一括データ読み込みにより入力時間を大幅に減らし、且つ入力ミスを心配する必要が無くなる。そのような事が出来る管理者ならば、商品別に売れ筋を解析し、更に自社の発注に活かすことも容易だ。ただ、このメリットを享受するには、より高い業務の効率化を目指すほどに現状の受発注システムの見直し幅が大きくなる為、多少導入への敷居は高いかもしれない。

 他に、取引機会の増大というメリットを挙げることが出来る。業界関係者だけが閲覧できるインターネット上の見本市、あるいは市場があれば、今まで知らなかった魅力的な商品を取り扱う企業との出会いが生まれ、また同一の商材を比較の上、より有利な条件で調達が可能となるだろう。自社商品の販売にも同じ事が云える。優れた商品ならば、取引機会は増大する。いわば東京ビックサイトで行う見本市をインターネット上で常に行うことが出来ると云うことだ。

 各地で行われるジュエリーショーは、建前、業界関係者だけが入場できる。インターネット上で同じ事を志せば、当然、業界関係者だけを選別しなくてはならない。その為にはパスワードによるアクセス制限を施し、会員専用にしなくてはならない。

◇ 会員制サイトとは

 最近、国内宝飾関連企業のサイトに於いても会員制サイトを多く見るようになった。閲覧にはIDとパスワードが要求され、事前に管理者よりこれらの発給を受けた閲覧者だけがアクセスできるという仕組みだ。各サイトにはアクセス権請求用のページがあり、審査の上、パスワードを発行するというのが一般的だろう開設企業は既存の顧客に加え、インターネットを利用する業界関係者にアクセス権を発行し、取引増を狙っている事と思う。しかし現状では、既存の顧客以外のID請求者の数はきわめて限定されているのではないかと想像する。例えば弊社でも会員制のコーナーがあり、メーカー・卸売り企業様からなる加盟店各位の商品数百点を購入できる仕組みを提供しているが、恐らく業界随一であろう約4,400人のメール会員を武器にしても、400件余りのアクセス権を発行している段階だ。

◇ 個別発展の弊害

 利用者の利便を考えてみる。現状では、新しい仕入先をインターネットで開拓しようと思った場合、まずネットで卸売りをしている企業を探すことから始めなければならない。そして何とか複数の会員制サイトを見つけても、それぞれのサイトでアクセス権を請求し発給を受ける必要があるので、少々手間だ。また先方がID等を決定する場合、複数のID・パスワードを管理しなければならないから、それらを将来に渡って管理して行く事も必要になる。特定企業との取引だけを目的にしているのならば問題ないが、ネットワークの利点を活かし、より優れた商品を探すために比較を行いたいと考えている利用者からみれば、複数の会員制サイトを渡り歩くごとにIDとパスワードを入力せねばならず、不便きわまりない。

◇ 解決策

 利用者の利便を考えなければビジネスは成功しない。この場合の利便の増進とは、同一のIDとパスワードで会員制サイトを渡り歩ける仕組み、またB2B取引を手がける企業を探す手間が省けるよう、参加企業とその取扱品目・料金一覧の提供だろう。つまり一種のポータルサイト(ポータルは入り口の意。目的に適った情報を探す目次の様な役割を果たす)が必要だ。参加企業はこのようなポータルに参加することで、自社だけで集めた場合と比べ、飛躍的に多い業界関係者(見込み顧客)の目に自社コンテンツを触れさせることができるメリットを享受出来き、そのポータルが提供できるメール配信システムを使い、アクセス権保持者達に新製品情報、キャンペーン、催事の案内等を郵便によるDMと比し、圧倒的に廉価に配信できるという利点もあろう。

 実現のためには、B2Bコーナーへのアクセスに際し、同一のパスワード管理ファイルを利用する必要がある。これは、各々がオリジナルドメイン(例えばwww.御社名.co.jp)でサイトを運営していたとしても、それらのサイト群のデータを保持するサーバを単一の事業者が統合管理していれば可能だ。サイト全体でも、あるいはある特定のページ(ディレクトリ)であっても、各企業の裁量によって自由にアクセス制限を施すことが出来る。今後のインターネット利用者増を考えると、ますますそのような、いわば業界スタンダードというべき認証システムの重要性が高まるものと考える。

 弊社のジュエリー・トレード・ロック・システム<www.jtls.net>は、国内で唯一のこの種のサービスであろう。今後、もしこのシステムを業界スタンダードにする事ができれば、業界各位にとってメリットがあると信じている。

 業界関係者各位にご賛同、ご参加をお待ちしています。

有限会社フクモト・ロジスティック・システム
代表取締役 福本 修

※本稿は、業界向け雑誌『ジェモロジスツ ニュース』(発行:GIA JAPAN)平成十三年七月号に寄稿した原稿と一部重複している。


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